子育ては喜びと共に、経済的な負担も伴うものです。
「子どもにはお金がかかる」とよく言われますが、具体的にどのくらいかかるのでしょうか?
また、その費用をどのように準備すれば良いのでしょうか?
この記事では、子育てにかかる費用の全体像から、年齢別の出費ポイント、活用できる支援制度、そして賢い家計管理のコツまで、子育て世代のお金に関する情報を詳しくご紹介します。
子育てにかかる総額とは?驚きの数字
子どもが生まれてから大学卒業までにかかる費用は、一般的に「1,000万円〜2,000万円」と言われています。しかし、実際には教育方針や生活環境によって大きく変わります。
文部科学省の調査によると、公立の小・中学校から大学(国公立)まで進学した場合でも、約1,000万円の費用がかかります。私立学校を選択すると、その金額は1,500万円以上に膨らむことも珍しくありません。
特に大学進学時には、入学金や授業料だけでなく、一人暮らしをする場合は生活費も必要になります。4年間の大学生活だけで、400万円〜800万円程度かかると言われています。
ただし、これらの数字はあくまで平均値です。子どもの数、住んでいる地域、選択する教育内容によって大きく変わってきますので、自分の家庭に合った計画を立てることが重要です。
年齢別・ステージ別にみる子育て費用
妊娠・出産期にかかる費用
子育ての費用は、実は妊娠したときからすでに始まっています。
妊婦健診は14回程度あります。保険適用外のため基本的には全額負担です。
一部の自治体では、健診費用の一部は補助が出ますが、すべてがカバーされるわけではありません。
また、出産一時金として健康保険から50万円が支給されます。50万を超えた差額は自己負担となります。
さらに、産後に必要なベビーベッド、ベビーカー、チャイルドシート、哺乳瓶などの初期費用も考慮する必要があります。
これらを全て新品で揃えると10万円〜20万円ほどかかるでしょう。
出産するだけで結構な出費がかかることになります。
そのため、重要でないものは中古品の活用やレンタルサービスの利用も検討する価値があります。
乳幼児期(0〜5歳)の出費ポイント
乳幼児期の主な出費は、おむつ、ミルク、離乳食、衣類などの日常消耗品です。
特におむつは1枚20円〜30円程度で、1日に6〜8枚使用するため、月に約5,000円〜7,000円ほどかかります。
卒乳するまでの間、粉ミルクは月に約5,000円程度の費用がかかることも覚えておきましょう。
また、保育園や幼稚園に通わせる場合は、その費用も考慮する必要があります。
認可保育所は所得に応じた保育料となりますが、幼稚園は月額1万円〜3万円程度、認可外保育施設はさらに高額になることもあります。
ただし、2019年10月からスタートした幼児教育・保育の無償化により、3〜5歳児クラスの子どもの幼稚園、保育所、認定こども園などの利用料が無償化されています。
小学生の教育費と生活費
小学生になると、学用品、給食費などの費用が発生します。
また、公立小学校の場合、授業料は無料ですが、PTA会費や教材費などで年間数万円程度の費用がかかります。
また、習い事を始める家庭も多く、スイミングや英会話、ピアノなどの習い事は月に5,000円〜2万円程度かかることが一般的です。
さらに、子どもの成長に伴い、衣類や靴のサイズアップの頻度も高くなります。
また、学童保育を利用する場合は、月に5,000円〜1万5,000円程度の費用がかかることも考慮しておきましょう。
中学・高校での費用増加
中学生になると、部活動や修学旅行などの費用が増えてきます。
公立中学校の場合、授業料は無料ですが、制服や体操服、部活動の道具などの初期費用が5万円〜10万円程度かかることもあります。
塾に通わせる場合は、月に1万円〜3万円程度の費用がさらに必要です。
高校になると、授業料が発生します。
公立高校の場合、就学支援金制度により実質無償となりますが、私立高校では年間30万円〜70万円程度の授業料がかかります。
なお、私立の場合でも、所得金額によっては高等学校等就学支援金制度を利用することができます。
また、大学受験に向けた塾や予備校の費用も増加し、月に3万円〜5万円程度かかることも珍しくありません。
大学進学と将来設計
大学進学時には、入学金や授業料の他に、一人暮らしをする場合は家賃や生活費も必要になります。
国公立大学の場合、4年間で約250万円程度、私立大学の文系学部では約400万円程度、私立大学の理系学部では約500万円以上の学費がかかることが一般的です。
一人暮らしの場合は、これに加えて月に8万円〜12万円程度の生活費が必要となります。
また、近年では大学院進学や留学など、さらに高度な教育を望む子どもも増えています。将来の選択肢を広げるためにも、早い段階から教育資金の準備を始めることが重要です。
意外と知らない!子育て支援制度と補助金
児童手当の活用法
児童手当は、中学校卒業までの子どもを対象に支給される手当です。
3歳未満は月額15,000円、3歳以上中学生以下は月額10,000円(第3子以降は30,000円)が支給されます。
この児童手当は生活費に充てるのではなく、子どもの将来のための貯蓄に回すことをおすすめします。
毎月自動的に別の口座に振り分けるなど、計画的な活用を心がけましょう。
医療費助成制度を知っておこう
多くの自治体では、子どもの医療費助成制度を設けています。
対象年齢や助成内容は自治体によって異なりますが、多くの場合、小学校就学前までは医療費が無料または一部負担となっています。
中学生や高校生まで対象を拡大している自治体も増えていますので、お住まいの地域の制度を確認しておきましょう。
また、子どもが重い病気やケガをした場合には、高額療養費制度や小児慢性特定疾病医療費助成制度などの支援制度もあります。
万が一の時のために、どのような制度があるか知っておくことも大切です。
教育費の負担を減らす支援制度
教育費に関しては、就学援助制度や高等学校等就学支援金制度、大学等の奨学金制度など、様々な支援制度があります。
高校生等を対象に、授業料に充てるための就学支援金が支給されます。公立高校では実質無償化、私立高校では所得に応じた支援が受けられます。申請により支給され、学校が直接授業料に充当するため、実際に手元にお金が渡されることはありません。
また、教育ローンには「国の教育ローン」と民間の教育ローンがあります。国の教育ローンは金利が低めに設定されているので、借り入れを検討する場合は比較検討することをおすすめします。
賢い家計管理で子育て費用を乗り切るコツ
子育て世帯の家計簿の作り方
子育て世帯の家計管理では、「固定費」「変動費」「子育て費」「将来の教育費」の4つに分けて考えると整理しやすいでしょう。特に「子育て費」は別枠で管理することで、どれくらいの費用がかかっているのかが明確になります。
家計簿アプリを活用すると、支出の分析が簡単にできるので便利です。
毎月の収支を把握し、無駄な支出がないか定期的にチェックする習慣をつけましょう。また、年間の大きな出費(入学金、塾の費用など)も事前に計画に入れておくことが重要です。
ムダをなくして効率的な貯蓄術
子育て世帯では「節約」も大切ですが、それ以上に「賢く使う」ことが重要です。
例えば、食費は週単位でメニューを決めてまとめ買いすることでムダを減らせます。
衣類は子ども服のリサイクルショップやフリマアプリを活用し、成長の早い時期はあまり高価なものを買わないようにするのも一つの方法です。
また、固定費の見直しも効果的です。特にスマホ代や保険料、サブスクリプションサービスなどは、本当に必要か定期的に見直すことで大きな節約につながります。
教育資金の準備タイミングと方法
教育資金の準備は、子どもが生まれたときから始めるのが理想的です。
毎月一定額を教育資金として積み立てる習慣をつけましょう。初めは少額からでも構いません。継続することが何よりも重要です。
積立方法としては、学資保険や教育資金用の定期預金、つみたてNISAなど様々な選択肢があります。
それぞれメリット・デメリットがありますので、自分の家庭の状況に合った方法を選びましょう。特につみたてNISAは長期的な教育資金の準備に適しており、非課税のメリットも大きいです。
子育て世代の将来設計:教育資金の準備のしかた
銀行預金などの貯蓄で教育資金を準備する
普通預金や定期預金などの銀行預金は、最もオーソドックスな教育資金の準備方法です。毎月一定額を教育資金用の口座に入金していく方法が一般的です。
メリットは、何といっても安全性の高さです。元本保証があるため、預けたお金が減ることはありません。教育資金のように、確実に必要となるお金の管理には、この安全性は大きな魅力です。
また、普通預金であれば引き出しの自由度が高く、いつでも必要な金額だけ引き出せる柔軟性があります。子どもの急な習い事や学校行事など、予期せぬ教育費が発生したときにも対応しやすいでしょう。
一方、デメリットとしては、現在の低金利環境では、ほとんど利息がつかないことが挙げられます。例えば、普通預金の金利は0.001%程度であることも珍しくなく、100万円を1年間預けても利息はわずか10円程度にしかなりません。
また、インフレによる資産の目減りに対応できないという問題もあります。物価が上昇すると、同じ金額でも購入できるものの価値が下がります。特に教育費は物価上昇率を上回るペースで値上がりする傾向があるため、長期的な教育資金の準備には不安が残ります。
教育保険は必要?メリット・デメリット
教育保険(学資保険)は、満期時に祝い金や満期保険金が受け取れる貯蓄性の高い保険です。
メリットとしては、強制的に貯蓄できることや、契約者(親)が亡くなった場合でも保険料の払込が免除される保障がついていることなどが挙げられます。
一方、デメリットとしては、低金利時代の現在、利回りがあまり高くないことや、途中解約すると元本割れするリスクがあることなどがあります。
教育保険を検討する場合は、単なる貯蓄手段としてではなく、保障面も含めて総合的に判断することが大切です。
つみたてNISAで教育資金を準備する
つみたてNISAは、少額から始められる長期・積立・分散投資のための非課税制度です。年間最大40万円までの投資枠があり、最長20年間非課税で運用できます。主に投資信託を通じて国内外の株式や債券に投資することで、長期的な資産形成を目指します。
メリットとしては、まず投資で得た利益(値上がり益や分配金)が非課税になることが挙げられます。通常、投資で得た利益には約20%の税金がかかりますが、つみたてNISAではその税金がかからないため、複利効果がより大きくなります。
また、長期投資による複利効果が期待できるため、預金よりも高いリターンが期待できる可能性があります。例えば、年率3%で20年間運用できれば、元本の約1.8倍に増える計算になります。
さらに、投資信託を通じて世界中の企業に分散投資できるため、一つの国や企業の業績に左右されにくいというメリットもあります。また、インフレに対応できる可能性があるため、長期的な教育資金の目減りを防ぐ効果も期待できます。
一方、デメリットとしては、元本保証がなく、投資のため市場の変動によっては元本割れのリスクがあることが挙げられます。短期的には価格変動があり、必要なタイミングで引き出すと損失を被る可能性があります。
また、投資の知識が一定程度必要となるため、金融商品に馴染みのない方には敷居が高く感じられることもあるでしょう。どの投資信託を選ぶかによってリターンやリスクが変わってくるため、ある程度の勉強が必要になります。
さらに、子どもが未成年のうちは親名義での運用となるため、子どもが成人したときに名義変更の手続きが必要になる点も考慮する必要があります。
教育資金準備の最適な方法は?
教育資金の準備方法には、それぞれメリットとデメリットがあります。では、どのように選べばよいのでしょうか。
結論から言えば、子どもの年齢や教育資金が必要になるタイミングに合わせて、複数の方法を組み合わせることが理想的です。例えば、以下のような使い分けが考えられます。
- 短期(1〜3年以内)に必要な資金:安全性を重視して銀行預金
- 中期(3〜10年)に必要な資金:学資保険と銀行預金の併用
- 長期(10年以上先)に必要な資金:つみたてNISAでの積立投資
特に大学進学など、まとまった資金が必要になる時期が明確な場合は、その時期に向けて計画的に準備することが大切です。例えば、子どもが小さいうちはつみたてNISAで運用し、高校生になったら徐々に安全資産である預金にシフトしていくという方法も考えられます。
また、家庭の状況によっても最適な選択は変わります。収入が安定していない場合は、急な出費にも対応できるよう、引き出しの自由度が高い貯蓄中心の準備方法が安心かもしれません。一方、ある程度の余裕がある場合は、長期的な視点で運用してリターンを追求する方法も検討できるでしょう。
教育資金の準備に「これが正解」という方法はありません。自分の家庭の状況や価値観、リスク許容度を考慮しながら、最適な方法を選んでいくことが大切です。迷った場合は、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談することも一つの選択肢です。
子どもの将来を見据えた資産形成法
子育てにかかる費用を準備するだけでなく、親自身の老後資金も並行して準備することが重要です。
「子どもの教育資金のために老後資金を犠牲にする」というケースもありますが、将来的に子どもに負担をかけないためにも、バランスの良い資産形成を心がけましょう。
資産形成においては、「早く始めること」「継続すること」「分散投資すること」の3つが基本です。特に子育て世代は出費が多く貯蓄が難しい時期ですが、少額からでも投資や貯蓄を始め、複利の力を味方につけることが大切です。
先輩パパ・ママに聞く!実際にかかったお金と後悔しないために
最後に、実際に子育てを経験した先輩パパ・ママたちの声をいくつか紹介します。
「思った以上に衣類にお金がかかりました。特に靴は成長が早くて、すぐにサイズアウトします。知り合いからのお下がりや、リサイクルショップをもっと活用すれば良かったと思います。」(小学生の男の子のママ)
「習い事の費用が予想以上でした。子どもが興味を持ったことはさせてあげたいと思い、水泳、ピアノ、英会話と増えていきましたが、継続することの大変さも痛感しています。」(小学生と中学生の子を持つパパ)
「教育費の準備は早めに始めておくべきでした。特に大学進学時には想像以上にお金がかかり、貯蓄だけでは足りず、教育ローンも利用しました。月々の返済が負担になっています。」(大学生と高校生の子を持つママ)
「子どもが小さい頃は、高価なブランド服や最新のおもちゃを買いがちでしたが、実はそれほど必要なかったと思います。子どもが本当に喜ぶのは、物ではなく一緒に過ごす時間だったと気づきました。」(社会人の子を持つパパ)
これらの声から学べることは、計画性を持って子育て費用に向き合うことの大切さです。
必要なものと不要なものを見極め、長期的な視点で教育費を準備することが、後悔しない子育て資金計画の鍵となるでしょう。
まとめ
子育てにかかるお金は決して少なくありませんが、早めの計画と適切な準備があれば、大きな負担にならずに乗り切ることができます。
子どもの成長段階に応じた費用を把握し、活用できる支援制度を調べ、賢い家計管理と資産形成を心がけましょう。
何より大切なのは、お金の使い方に優先順位をつけること。子どもにとって本当に必要なものは何か、家族にとって大切な価値は何かを常に考えながら、バランスの良い子育て資金計画を立てていきましょう。
子育ては大変なこともありますが、子どもの成長を見守る喜びはかけがえのないものです。
賢く準備して、安心して子育てを楽しめるようにしましょう。
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