「知育玩具って本当に効果あるの?」
「科学的な根拠はある?」
「とりあえず、与えればいいのかな?」
こんなことを思っていませんか?
なんだか知育玩具って聞くとちょっと怪しい感じもしますよね。本当に子どもに与えても良いのだろうか?などと不安に感じるのも当然だと思います。
今回は様々な論文を読んできた私が、知育玩具の効果について科学的な裏付けと共に解説していきます。
知育玩具に効果はあるか?
一般的に下記のような様々な能力が身につくと言われています。
また、非認知能力も鍛えられると言われています。
非認知能力とは自立心・自制心・自己肯定感・協調性・共感力・倫理性といった、学力以外に必要な能力のことです。
普通のおもちゃとの違い
普通のおもちゃとの違いって何でしょう?
知育玩具もおもちゃの一種ではあります。
ただし、知育玩具は子どもの能力や感性を向上させることを目的に設計されている点が普通のおもちゃと大きく違います。
どんな能力や感性の向上を狙っているかは知育玩具によってそれぞれ異なりますが、知育玩具を使うことでその知育玩具が狙う能力を効果的に高めることができると考えられています。
普通のおもちゃは遊ぶと言うことを主眼に作られているため、必ずしも能力の向上には繋がりません。
知育玩具の効果に科学的根拠はあるか?
ここまで書いてきたのが、一般的に知育玩具の説明で言われていることです。果たして、これは科学的な裏付けはあるのでしょうか?
科学的な裏付けはほとんどなし?
日経サイエンスの記事によると、以下のように書かれています。
E.バンス 「効果ある?知育玩具」|日経サイエンス2018年11月号 (株式会社 日経サイエンス)
- いわゆる知育玩具には、乳幼児の読字や学習、算数、歩行の開始時期を早めると宣伝しているものが多いが、科学的な裏付けはほとんどない。
- 赤ちゃんが早い時期に進歩を見せても、それが長期的な強みにつながることはを示した研究はない。
- 遊びがもたらす最大の恩恵は、他の人間と交流することから生じる。だから、親はちゃんと時間を取って子どもと一緒にいることが大切だ。
知育玩具が謳っている能力を、その知育玩具を使えば早く獲得できると裏付けされた商品はほとんどないとのこと。
例えば、言葉を早く覚えることができると商品に書かれていても、本当に早く話せるようになるのか、どういうメカニズムで早く覚えることができるのか説明できるものは少ないのです。
また、短期的には成長を早めることができたとしても、それが将来的な優位性につながることを示した研究はないといことです。
例えば、同じ記事に1982年にオハイオ州で行われた研究について書かれています。これによると、話し始めるのが早かった子は成長後の知能指数(IQ)が高くなる傾向があるが、認知上の問題や社会的な地位を考慮するとその効果は消えてしまうというものだったそうです。
知育玩具が効果ありそうなデータも!
プレジデントファミリー編集部が現役東大生の母親に行ったアンケートでは次のような結果が出ています。
積み木やブロックなど知育グッズや図鑑による遊びをほぼ毎日していたという回答が一般的な家庭より約1.7倍も高いようです。(一般家庭:29.9%、東大生家庭:51.7%)
学力という面で優れている東大生においては、幼児期に知育グッズでよく遊んでいた傾向が表れています。
また、視点を変えて脳の発達から考えてみます。
これまでの研究によると、生後6歳ごろまでに脳が急速に発達することがわかっています。6歳頃になると脳はほぼ大人と同様の重さになります。(Dobbing, J. & Sands, J., 1973)
脳内で高度な処理を行う前頭前野のシナプス密度は4歳ころに最大となるという研究結果もあります。(ハッテンロッカー, 1990)
そのため、幼児期に”適切な教育”をすることは合理的なようにも感じます。(ただし、適切な教育が知育玩具で遊ぶことかは不明)
これらの内容を整理すると
日経サイエンスの記事では知育玩具は意味がないと受け取れる内容ですね。
特に、獲得した能力が長期的な強みにはならないと捉えられるようにも書かれています。(正しくは、「強みにはならない」のではなく、「長期的な強みになると示した”研究がない”」であって、知育玩具自体にメリットがないと言い切っているわけではない)
私も、知育玩具で一時的に能力を獲得しても、知育玩具だけで将来にわたる長期的な強みを得るのは難しいと思っています。
なぜなら、幼児期だけ一生懸命勉強してもすぐに周囲に追いつかれてしまうからです。
例えば、中学生や高校生の頃にこんな人はいませんでしたか?中学校では学年トップクラスに優秀だった人が、高校で派手に遊ぶようになり、成績は今一つとなってしまった。ついには自分の方が優秀な大学に入学した。
これは学力という1つの能力のみの話ではありますが、同様に幼児期に得た能力も簡単に追いつかれてしまうと考えられます。
ただし、学力のような明確な能力ではなく、非認知能力のようなものが養えるとしたら話は別だと考えています。
もし知育玩具で「失敗を繰り返してもチャレンジする力」のような力を養えるとしたら、大きくなって何か課題にぶつかったとしても自分で解決していくことができるでしょう。
知育玩具で非認知能力が育つのであれば、それは将来的な強みになり得ます。
東大生が幼児期に積み木や知育玩具で遊んでいたというアンケート結果を紹介しましたが、これは「知育玩具で遊んだため学力がついた」のではなく、「幼児期に知育玩具で遊ぶことで非認知能力を高め、勉強で壁にぶつかっても突破できる力を身に付けていた」のかもしれません。(実際はわかりません)
残念ながら、非認知能力は数値で表しにくいので、知育玩具による向上の効果は示せないです。また、それが成長後にどう影響しているかは示しにくいので、知育玩具と非認知能力の効果を示す研究はなかなか見つかりません。
結局知育玩具は与えるべき?やめた方が良い?
以上を踏まえ、知育玩具を与えるべきか私の考えを書いていきますので、無視いただいても結構です。
まず、知育玩具で遊ばせることに親が躍起になる必要はないでしょう。
知育玩具を与える時は子供の様子をよく観察する必要があります。
子どもが知育玩具で楽しんで遊んでいるなら全く問題ありません。楽しみながら遊んで、一定の能力向上につながる可能性があるなら無駄ではないからです。
一方で、知育玩具を触らせても子どもが楽しんでおらず、半ば強制するようなら、無理に知育玩具で遊ぶ必要はないでしょう。子どもにとってもやらされ感が強く、能力の獲得以前に親子の適切なコミュニケーションを阻害してしまいます。得られるものも得られない状態になってしまいます。
ただ、1回や2回くらい興味を持たなくても、時期を変えて再度与えたり、大人が楽しそうに遊んでいたりすると興味を持つことはありますので、気長に待つことも必要です。
日経サイエンスの記事にも書いてありますが、親など周囲のコミュニケーションは重要です。この点をおろそかにして知育玩具で遊ばせることに注力するべきではないでしょう。
別の視点ではありますが、賢い子の育て方についてまとめた記事がありますので、興味がある人はこちらも読んでみてください。
知育玩具を与える時の注意点
知育玩具は、ただ与えるだけではダメです。まず、子どものようすをよく観察することが大事です。
子どもの発達状況はどうか?どんなことに興味があるか?何をしようとしているのか?などを感じ取り、その子に適切なものを与えます。
知育玩具の対象年齢よりも、その子の発達状況や興味で与える知育玩具を選びます。
少し脱線しますが、知育玩具は1つ与えるではなく、適した知育玩具を複数準備して選べる環境にすると、自立心を養いやすいと考えられます。
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